2009年7月8日水曜日

無人島(その6)

・・・・・・っということで、変な夢の続き。

ある無人島に一人の男が流れ着いた。

男は無名の画家であった。

時間はかかったが、小屋も建て、どうにか生きていくだけの環境を整えることができた。

時間だけは十分にある。

男は、これは神が自分に絵を描くために十分な時間を与えてくれたのだと、前向きに考えることにした。

それからというもの、男は絵を描くことに没頭した。

何年も何年も絵を描き続け、次第に男の絵は高い芸術の域に達した。

まあ、神がかりといっていいほどの出来栄えであった。

・・・・・・

男は、島を一周することを日課にしていた。

水平線に船が現れないかと、いつも期待しながらの散歩であった。

ある日、島の反対側からの帰路、峠を越えたところで男の住む小屋の前に船が錨を下ろしているのが見えた。

小さなボートが砂浜を離れ、船の方向に向かっている。

男は気付いてもらおうと、必死になって叫び、手を振りながら坂を駆け下りた。

男はボートのあとを必死になって追いかけた。

砂浜を海に向かって駆け、海に飛び込んでまで追いかけた。

でも、ボートは引き返してくれなかった。

ボートまでの距離はそれほどでもなく、声も聞こえているはずなのに。

そのまま、船はボートを回収して、錨を上げて水平線の彼方に消えてしまった。

肩を落としながら、男が自分の小屋に帰ったとき、今まで書き溜めていた絵が全部消えているのを発見した。

男は、呆然として呟いた。

「空き巣にやられた」・・・・・・と。

・・・・・・

ニューヨークの画廊に、無名の画家の絵が展示されたのは、それからしばらく経ってからだった。

その絵のすばらしさは、たちまち評判になった。

いったい誰の作品なのか。

覆面画家の作品ということもあり、ますます高値で取引されるようになった。

もちろん、その作品を取り扱う画商はあっという間に大金持ちになった。

・・・・・・

何年か経ったある日、画商は知り合いの船長に電話をかけた。

「もうそろそろ、次の作品を仕入れる時期なので、航海の準備をしておいてくれ。」





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