2009年7月11日土曜日

無人島(最終回)

・・・・・・っということで、変な夢の続き。

その無人島に、初老の男が流れ着いてから何年経っただろうか。

最初の頃は、生きることに必死だった。

でも、今はとりあえず生きていくことは出来る。

とりあえず・・・・・。

最近、男は丘の上から海をボーっと見て過ごす時間が増えた。

いったいどっちが幸せなんだろう。

・・・・・・・・・

ここに流れ着く前、男は都会で暮らしていた。

普通のサラリーマンだったけれど、とにかく働いた。

生きるために・・・・。

ここも同じだ。

働かないと、生きていけない。

どこが違うというんだろうか。

・・・・・・・・・

ここは孤独だ。

誰も話す相手がいない。

最初の頃は、寂しくて気が狂いそうだった。

妻に会いたい。

子供たちに会いたい・・・・・・っと。

でも、都会で暮らしていたとき、自分は孤独じゃなかったのか。

間違いなく孤独だった。

会社にいても、飲んでいても、家庭の中でさえ男は孤独だった。

いったい、今と、どこが違うんだ。

・・・・・・・・・・

そう考えていくと、

自分は、本当に帰りたいのだろうか。

こんなことを考える自分は変なのだろうか。

・・・と、考えるようになった。

・・・・・・・・・・

ここには何も情報が無い。

TVも、新聞も、インターネットも無い。

情報を必死で追いかけていた以前の自分を思い出す。

追いかけること事態に、何の疑問も浮かばなかった。

でも、情報って何だ。

それほど大事なものなのか。

・・・・・・・・・・

ここには、時間がある。

十分すぎるほど時間がある。

ここの時間は自分のものだ。

どう使おうが自分の勝手だ。

だが、以前の自分に時間があったのだろうか。

ワケの分からない決まりごとで時間が消費されていた。

自分と向き合う時間さえ取れないまま、毎日が過ぎていった。

ただ何となく。

・・・・・・・・・・

少なくともここでは、自分と向き合うことが出来る。

真正面に自分の心と向き合える。

いったい今までの自分って何だったのだろうか。

・・・・・・・・・・

いったいどっちが幸せなんだろう。

・・・・・・・・・・

奇跡的に男は海上保安庁の飛行機によって、生存が確認された。

救助のためにヘリコプターが派遣された。

「奇跡的な生還!!」

「たった一人孤島で10年を生き延びる!!」

「現代のロビンソンクルーソー!!」

マスコミは大騒ぎで連日報道した。

男は引っ張りだこになった。

でも、その男が寂しそうな目をしていることに気がつくものは誰もいなかった。


・・・・・・おわり。



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