・・・・・・っということで、なぜかぼくんところには、問題社員が回されてくる。
これも、だいぶ昔の話だが、会社のトップに近いスジからの依頼だった。
会社で付き合いのある地方の実力者なのだが、その息子を預かってくれと言われた。
オヤジはリッパな人間なのだが、息子はサッパリなのである。
どうサッパリなのかというと、無気力なのである。
もう大学生の歳なのだが、学校にも行かずに遊び呆けているのである。
悪い仲間達と。
最初にその息子と会ったとき、「こんな人間見たことない」と思った。
瞳(ひとみ)が空洞なのである。
目が濁っているとか、輝きがないとかは分かってもらえるでしょうが、
彼の瞳は、ブラックホールのように底なしなのである。
上司の依頼は、ちょうどその頃ぼくが担当していたアメリカの関係会社に、
彼を留学(?)じゃなくて、向こうで仕事で使ってくれというのだ。
もうムチャクチャな依頼なんですね。
オヤジとすれば、世間体が悪いんです。
大学も行かず、遊んでばかりいる息子って。
そこで、一発逆転を狙って、アメリカで仕事をさせ、
ついでに英語を覚えさせ、「ハク」を付けてから帰国させようと。
そんな恥ずかしいことを頼めるのは、仕事で世話をしている当社だけだったというわけ。
何で学校への留学じゃないかというと、四六時中目が届かないからだ。
・・・・・・
親バカって、本質的には喜劇ですが、ここまで来ると悲劇ですね。
それでも、薮から棒に送るわけには行かない。
英語が全くダメだったのです。
そこで、「留学」させる前に、四谷の語学学校に入学させた。
高い入学金と、授業料、教科書代を払い。
でも、通ったのは、1日だけ。
すぐに、田舎の悪い連中のところへ戻ってしまった。
・・・・・・
この辺で、ぼくもかなり抵抗したんだけど、聞き入れてもらえなかった。
それじゃっテェんで、会社の社員寮に押し込んで、会社でアルバイトさせることにした。
これなら、目が届く。
基本的に馬鹿じゃないから、仕事をさせれば平均的なことは出来る。
3ヶ月くらいは働いてくれたかな。
でも、そんな程度では改心しないんですよね。
また脱走。
連れ戻す。
でも、また脱走の繰り返し。
・・・・・・
ついに、ぼくは手紙を書きましたよ。
オヤジさん宛てに。
自分で言うのもナンだが、結構な名文だった。
送る前に、トップの了解を得るために読ませた。
「ウンこれはいい手紙だ。残念だけど君はよくやってくれた。」っと、コメントを貰った。
だが、その手紙を託した上司が相手に渡さずに、握りつぶしてしまった。
だいたい想像が付いたが、それ以上は関わりあいたくなかった。
・・・・・・
エット、何を書きたかったんだっけ?
そうそう、その息子なんですよ。
いまから思えば、彼の空洞のような瞳は、「ヤク」のせいだったんじゃないかってネ。
でも、彼がそんな風になった一番の原因は、
地方の実力者の息子ってぇ心の重荷だったんだろうな。
一度、オヤジとも会ったことがあったが、とてもリッパな人格者だった。
その後、彼がどうなったか?
女性と同棲するようになったと聞いています。
その後の消息は分かりません。
でも、トコトン親父から離れていったと思います。
その方が彼の幸せだったとか、人生の落伍者になったのは自業自得だとか、
そんなことを言うつもりはありません。
ただ、それが彼の人生なんだとしか言えません。
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