2009年10月20日火曜日

心の風邪(その2)

・・・・・・っということで、なぜかぼくんところには、問題社員が回されてくる。

これも、だいぶ昔の話だが、会社のトップに近いスジからの依頼だった。

会社で付き合いのある地方の実力者なのだが、その息子を預かってくれと言われた。

オヤジはリッパな人間なのだが、息子はサッパリなのである。

どうサッパリなのかというと、無気力なのである。

もう大学生の歳なのだが、学校にも行かずに遊び呆けているのである。

悪い仲間達と。

最初にその息子と会ったとき、「こんな人間見たことない」と思った。

瞳(ひとみ)が空洞なのである。

目が濁っているとか、輝きがないとかは分かってもらえるでしょうが、

彼の瞳は、ブラックホールのように底なしなのである。

上司の依頼は、ちょうどその頃ぼくが担当していたアメリカの関係会社に、

彼を留学(?)じゃなくて、向こうで仕事で使ってくれというのだ。

もうムチャクチャな依頼なんですね。

オヤジとすれば、世間体が悪いんです。

大学も行かず、遊んでばかりいる息子って。

そこで、一発逆転を狙って、アメリカで仕事をさせ、

ついでに英語を覚えさせ、「ハク」を付けてから帰国させようと。

そんな恥ずかしいことを頼めるのは、仕事で世話をしている当社だけだったというわけ。

何で学校への留学じゃないかというと、四六時中目が届かないからだ。

・・・・・・

親バカって、本質的には喜劇ですが、ここまで来ると悲劇ですね。

それでも、薮から棒に送るわけには行かない。

英語が全くダメだったのです。

そこで、「留学」させる前に、四谷の語学学校に入学させた。

高い入学金と、授業料、教科書代を払い。

でも、通ったのは、1日だけ。

すぐに、田舎の悪い連中のところへ戻ってしまった。

・・・・・・

この辺で、ぼくもかなり抵抗したんだけど、聞き入れてもらえなかった。

それじゃっテェんで、会社の社員寮に押し込んで、会社でアルバイトさせることにした。

これなら、目が届く。

基本的に馬鹿じゃないから、仕事をさせれば平均的なことは出来る。

3ヶ月くらいは働いてくれたかな。

でも、そんな程度では改心しないんですよね。

また脱走。

連れ戻す。

でも、また脱走の繰り返し。

・・・・・・

ついに、ぼくは手紙を書きましたよ。

オヤジさん宛てに。

自分で言うのもナンだが、結構な名文だった。

送る前に、トップの了解を得るために読ませた。

「ウンこれはいい手紙だ。残念だけど君はよくやってくれた。」っと、コメントを貰った。

だが、その手紙を託した上司が相手に渡さずに、握りつぶしてしまった。

だいたい想像が付いたが、それ以上は関わりあいたくなかった。

・・・・・・

エット、何を書きたかったんだっけ?

そうそう、その息子なんですよ。

いまから思えば、彼の空洞のような瞳は、「ヤク」のせいだったんじゃないかってネ。

でも、彼がそんな風になった一番の原因は、

地方の実力者の息子ってぇ心の重荷だったんだろうな。

一度、オヤジとも会ったことがあったが、とてもリッパな人格者だった。

その後、彼がどうなったか?

女性と同棲するようになったと聞いています。

その後の消息は分かりません。

でも、トコトン親父から離れていったと思います。

その方が彼の幸せだったとか、人生の落伍者になったのは自業自得だとか、

そんなことを言うつもりはありません。

ただ、それが彼の人生なんだとしか言えません。

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