・・・・・・・っということで、だいぶ昔の話になりますが、
同じ職場に年配の人がいました。
今もご存命なので、詳しいことは書けませんが、ある業界では有名人でした。
大正生まれの人で、特攻基地で出撃命令を待っているところで終戦になったようです。
すでに引退してもいい歳でしたけれど、トップが直接頼み込んで当社に来て貰いました。
自らも「浪花節」と言うくらい、人情にもろい面を強調されていましたが、正論はずけずけ言うタイプでした。
いかにも好々爺風だったけれど、正直なところぼくは、その人をあまり好きではありませんでした。
辛らつな言い方の裏に、高等なゴマスリの匂いを感じたからです。
若いときから「飲み・打つ・買う」の三拍子揃った生き方をしていたようです。
そんな歳になっても、若い女子社員のお尻を触ったり、胸を触っていたので、その片鱗は十分すぎるくらい見ることが出来ました。
不思議なことに、女の子達は嫌がってはいませんでした。
大体、想像できました?その人の人物像。
若いときに結婚した奥さんがいて、だいぶ苦労をかけたそうです。
いつも家を空けていたし、酔って遅く帰ってきたと思ったら、
同僚を連れてきて、これから酒を飲むから料理を作れなんて、平気で言うくらい。
奥さんは古風な人で、彼には勿体ないしっかりした女性だとの評判でした。
娘と息子、殆ど彼女が一人で育てたようなものでした。
・・・・・・
あるとき、その奥さんが病に倒れ、入院してしまいました。
不治の病でした。
彼は、付きっ切りで看病しました。
彼女は、お見舞いに来た人には、ベッドの上に背筋を伸ばして座って対応していたそうです。
でも、だんだん病気が進行して、もう起き上がれない状態になりました。
もう最後も間近になって、彼女が彼につくづく言ったそうです。
「今までアナタとこんなに長く話したのは初めてですね。」・・・って。
そして、亡くなってしまったとき、彼は傍目も気にせず抱きついて大泣きに泣いたそうです。
もう少し、傍にいて沢山話しておけばよかったと、酒を飲みながらつくづく話していました。
奥さんは最後まで身だしなみを気にしていて、死の間際になっても薄く口紅を引いていたそうです。
その話の段になると、彼は決まってうつむいてしまうのでした。
・・・・・・
以上、夫婦の形を考える一つの参考として、紹介しました。
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