・・・・・・・っということで、夫婦の形(その8)
「そうなんですよ、引っ越してきたときから仲が良くて、
いつも手をつないで散歩したり、一緒に買い物に行く姿を見かけましたよ。」
隣近所の住人は口をそろえて、その若夫婦のことをそう表現した。
奥さんは資産家の娘らしく、夫は銀行員だったようだ。
大きな屋敷に二人で住んでいた。
子供はいない代わりに、大型犬を飼っていた。
人懐っこい犬で、いつも玄関の柵のところにいて、通りがかる人たちに愛想を振りまいていた。
柵越しに頭を撫でても、吠えるどころか、体をすり寄せるくらいだった。
・・・・・・
何年か過ぎたある昼間、犬が激しく吠える声が聞こえた。
すぐ奥さんが犬をしかりつける声がした。
不思議なこともあるなぁと、隣家の奥さんは思った。
それからというもの、毎日昼過ぎになると、犬が吠えるようになった。
・・・・・・
一年位経って、最近ご主人の顔が見えないねぇ~なんて、
近所の人たちが噂をしていたある日、新聞を見てびっくりした。
その若旦那が、銀行の金を着服して逮捕されたという記事が出ていたのだ。
・・・・・・
程なく経って、隣の若奥さんが見知らぬ男と一緒に、犬を散歩させている姿が目撃された。
連れていりる犬は、あの大型犬ではなかった。
「どうも、どこかで見たことがあるような男だなぁ~」
隣の奥さんが首をかしげた。
「そうだ、以前しつこく来ていた、訪問セールスの男だっ!!」
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