2010年4月28日水曜日

夫婦の形(その5)

・・・・・・・っということで、夫婦の形(その5)

その老夫婦は、終戦後まもなく結婚したので、かれこれ65年も一緒に暮らしていることになる。

夫には、将校だった頃の颯爽とした面影はもうとっくに無くなって、杖がないと歩けない状態である。

妻にとって嫌なことは、夫が未だに威張っていて、一寸したことに対してグチグチ言うことである。

昔は、そんな男じゃなかったのに。

正直で、真面目で、曲がったことが嫌いで、そのくせとても優しい夫であった。

だが、定年が過ぎて、することも無く家でゴロゴロする夫に我慢がならなくなってきた。

夫は公務員で、そこそこの地位まで出世したが、商才は全くといって持ち合わせていない男であった。

一方、妻の方は商人の血が濃いらしく、程なく株にのめり込んでいった。

そして、儲けた。

彼女は、年金の額よりずっと多くの収入をもたらした。

彼女が株で稼いだお金で、世界各国を旅行した。

クイーン・エリザベスで航海することもあった。

だが、もう80歳を過ぎて、海外旅行は体力的に諦めざるを得なくなった。

妻は、今でも株をやり続けているお陰か、頭は何時までもシャープだ。

夫のほうはボケてはいないが、日に日に頑固になっていく。

流石に暴力は伴わないが、毎日毎日喧嘩ばかりしている。

夫にとっての弱点は、若い頃に福岡に単身赴任していたとき、一度だけ浮気をしたことだ。

よりによって、相手は飲み屋のすれっからしだった。

それを持ち出されると、まるで切り札のジョーカーのような効果があり、黙らざるを得ないのだ。

・・・・・・・

妻は本気で思っている。

「早く夫が死んでくれないか」と。

そうすれば、ようやく自由になれる。

事実、夫が死んだ後、吹っ切れたように明るくなった友達を沢山知っている。

私が、まだ元気なうちに・・・・・・



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