2010年8月22日日曜日

最後のお別れ

・・・・・・・っということで、21年間乗った「愛車」と別れた。

最後のドライブに港北ニュータウンにある「ニトリ」に家族で行った。

普通は、246をそのまま真っ直ぐ行けばいいのに、東名高速に乗って、すぐ川崎インターで下りた。。

最後に高速道路を思いっきり走らせてやろうと思ったからだ。

「愛車」は気持ちよさそうに走った。

120km/hに加速するのに、周りを走る最新車になんら引けをとらなかった。

やっぱり、途中でエアコンが効かなくなったが、

効いたり効かなかったり。

その都度、ウィンドウを上げたり下げたり。

でも、こんな不便な作業も今日で最後だ。

・・・・・・

別れが惜しくって、ニトリからの帰りに家の近くの東急ストアに寄った。

別に買うものもないが・・・。

夕方トヨタの営業マンが引き取りにくるまで、少しでも乗っていたかったからだ。

最後は冷房がガンガンに効いた。

家に着いたとき、ガソリンはまだ2/5残っていた。

・・・・・・

クルマの室内に残っているめがねケースや小銭、ガソリンスタンドのカード、カセットテープ、

ウィンドウの曇り止めスプレー、JAF会員証、ゴミ箱、道路地図・・・・全部をビニール袋に入れって、

改めて車内を見渡した。

まるで21年前に新車で来たときと同じだった。

ガラクタを片付けたら、まだ新車の匂いが残っているなんて・・・・

これには自分でも驚いてしまった。

・・・・・・

なぜかエアコンは調子よかった。

ガンガンに冷えた。

一人リクライニングシートを倒して身体を伸ばした。

自宅の車庫にエンジンをかけたまま、ガソリンがなくなるまで、

この快適な車内に居続けたいと思った。

・・・・・・

最後に、今では旧式になったラジオを点けた。

NHKFMのクラシックをやっていた。

ベルディーのアイーダから、なんだか知らないテノールのアリアが聞こえてきた。

このクルマの最後に相応しい、悲しいアリアだった。

なぜか、あんなに調子が悪かったエアコンが、絶好調だった。

このクルマもぼくと最後の別れを惜しんでいるのだろう、・・・タブン。

・・・・・・

時間通りに、トヨタのセールスマンは家のチャイムを押した。

必要書類に、印鑑を押し、廃車料の9,620円を払った。

営業マンがぼくからキーを受け取るとき、「エンジンかかります?」・・・っと、スットンキョウな質問をした。

21年前のクルマを運転するのは、彼にとっても初めてのことかもしれない。

イラッとして「アタリマエジャネーか」と、心の中でぼくはつぶやいた。

・・・・・・

家族の者が全員、車を見送りにガレージの前に集まった。

ぼくは、最後に質問した。

「このクルマはスクラップになっちゃうんですか?」

「それとも、アフリカかどこかで余生を遅れるんですか?」

・・・・・っと。

返事は極めて明快なものだった。

「エコカー減税というものの趣旨は、効率の悪い車を廃車にするのが目的で、そのために補助金を出すものですから。」

分かっていたけれど、ぼくはこの言葉にショックを受けた。

「効率の悪い車って、このオレのクルマってことか?」

「年がら年中ガレージに泊まったままで、21年間でたったの64,000kmしか走らなかったオレのクルマが、

効率の悪いクルマだったって言うんかい?」

「いったい彼(オレのクルマのことね)が、どんだけ排ガスを出して、地球環境を汚したっていうんかい?」

「これからだって、そんじょそこいらのクルマに比べて、どんだけ環境を汚染するっていうんかい?」

「それよりも、まだまだ走れる車をスクラップにしてしまうほうが、よほどエネルギーの無駄じゃないかい?」

・・・・ってぇ考えが、頭の中を駆け巡った。

・・・・・

そしてぼくは、クルマのほうに見やった。

「完璧な機能を保っている(エアコンは別ね)この美しい彼が、来週の今頃はペシャンコにされているんかい?」

心の中で、ぼくはつぶやいた。

「ゴメンネ」

・・・・・・

営業マンに運転されながら、道のコーナーを曲がって見えなくなるまで家族全員が見送った。

ぼくは、彼が走る姿を外から見たのは、これが初めてだということに気がついた。

そして、それはぼくにとって彼の最後の姿だったのだ。

・・・ゴメンネ


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