・・・・・・・っということで、朝の通勤電車内物語。
いつも通るその駅は、郊外からの私鉄と交差する主要駅。
降りる人も多いが、乗ってくる人はそれよりさらに多い。
階段に近いドアは降りる人が固まるので、そのドアより一つ二つ離れたドアから入り、
そのドア付近のまだ空いている席に猛ダッシュをかける人々がいる。
どこで、そのような知恵を付けたのか。
競い合って負けると、今度は隣の車両で降りるのが遅延しているドアをめがけて、再度猛ダッシュ。
そこまでして座れない男の、悔しさを全身からあふれ出させている姿を見ると、いと哀れなり。
・・・・・・
一つ空いている席で、女性がやや有利の微妙な距離をネクタイを締めたサラリーマンが先に座って平然としている姿。
男なんだから譲ってやれよ。
そんなところで、男を捨てるなよ。
・・・・・・
今日は三人がけの椅子の真ん中に座っていた。
その駅で乗り込んできた中年の男、一瞬の真剣なまなざしを視界の端に感じる。
ぼくのまん前に立った。
三人の中で、ぼくが一番早く席を立つことに賭けたようだ。
(残念でした。ぼくの降りる駅はまだ先だよ。)
しばらく経って、右の席が空いて、女性が座った。
まん前の男の悔しそうな表情、見なくても感じる。
そのうち、その男が傘をぼくの膝に押し付けてきた。
まあ、わざとじゃないんだろうが、気持ちが現れている。
そんなことしたって、早く降りるわけでもなし。
それほど彼にとって、朝の電車で座ることが重大事なのだ。
ぼくは、持っていた傘で、相手の傘を押し返す。
・・・・・・
ようやくぼくは、席を立つ。
男は、何食わぬ顔をして、わざとゆっくりモッタイをつけて座る。
彼の降りる駅までどのくらいなのだろうか?
あと何分座るだけなのだろうか?
彼の乗ってくる私鉄はさぞかし悲惨な状況なんだろうなぁ。
そのような毎日を繰り返していくうちに、彼は人間の尊厳を失っていったのだろうナァ。
・・・・・・っと思うと、いと悲し。
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