2008年2月20日水曜日

イージス艦「あたご」のこと

・・・・・っということで、イージス艦「あたご」と漁船との衝突事故である。
昔々、おおむかし、海上で生活していたことのある私にとって、人ごととは思えない。

まず感じるのが、情報が錯綜しているナ~っということ。

(1)特に、航行灯の解釈。漁船の船団が、右から左に横切るときは、漁船の左側が見えるはずである。
ニュースで伝えられているとおり、左舷には赤色灯火が付いている。(右舷は緑色。)
コレは、船乗りや、航空機のパイロットには常識中の常識。

このことを覚えるために:右みどり(みぎの「み」をかけている。)
あるいは、赤玉ポートワインなんて覚えたりしている。
Portは左舷側(自衛隊は取り舵という)という意味なので。(ちなみに右舷はStarboard)

右に灯いているはずの緑を見たとするなら、当然漁船は左から右に横切っていたはずなので、漁船の左側に衝突するはずがない。
これは、誰でもオカシイっと思うはずである。

(2)じゃあ、いつ発見したかのかという問題。
調べてみると、昨日の千葉の日の出時刻は06:24 (104度方向から)。
衝突したのが、04:05過ぎらしいので、明け方の薄明はまだなかったはず。

じゃあ、月明かりはどうだったか。
その時間の月の位置を調べてみると西北西にほぼ満月の月(月齢12)が、水平線上ぎりぎり(約11度の高さ)にかかっていた。
「あたご」はほぼ北に進路をとっていたはずだから、船橋の見張りからは十時方向に満月に近い月を見ながら、大体2時方向から近づく漁船団が見えたはずである。
だから、月は邪魔になるどころか、月明かりがあったなら、夜間のウォッチにはとても良い条件であったと思われる。
薄明はなく、月明かりがあっったが、遠くの他船を見分けるのは、先ず航行灯であったこと。
数百メートルなら、肉眼で船影を確認できること。

(3)勝手な推理
いちばんやってはいけない、情報不足の中での推理を、私の経験からしてみます。
相手の漁船は一隻ではなく、複数の塊で航行していたこと。
少なくとも、3隻の船団であったようです。
その船団が、一糸乱れず塊として、「あたご」の右から左に横切ったなら、避けなければならないのは、まず「あたご」の方です。
相手を右に見る方が避けるのがルールです。
真正面から近づくなら(このときは、赤と緑の灯火が同時に見える。)、お互いが右に避けます。

私が思うに、衝突コースに入っていると気付いたとき、漁船はそれぞれがバラバラの行動をとったのではないか。
塊だったものが、急にバラけた。
赤の灯火のもの、緑の灯火のもの、あるいは両方とも見えた、「あたご」側からすればどうすりゃいいの!!・・・・っとなる。
普通は、右に舵を切って、避けられるはずだったのに。
「あたご」が後進に入れたとニュースで言っていた。
陸に近いとはいえ、大海原で後進をかけるということは、先ず考えられない。
そのときの「あたご」がいかにパニックになっていたかが想像できる。

(4)もう一つの気になる条件
上で書いたように、満月に近い月が西の水平線上近くにあった。
西に向かう漁船側からすると、殆ど真正面に月を見ながら航行していたのではないか。
私なんか、非常にロマンチックな情景を思い浮かべてしまう。
それが、漁船側からの「あたご」の発見に影響なかったか。

(5)最後に気になる点
4時過ぎという時間に、ピンとくる。
船の当直は、0-4、4-8、8-0の3つに別れている。
例えば、0-4は0時から4時までの4時間という意味。
それぞれ、一日に2回めぐってくるので、8時間勤務ということですね。

4時という時間は、ちょうど当直の交代時間に当たる。
前の当直からの引継ぎなんかあるから、20分から30分はラップする。
もし、4時5分に衝突したとするなら、艦橋には前の当直と、次の当直が居たはずである。
ようするに、バタバタする時間帯ですね。

昔々、おおむかし、船乗りだった私が、いま感じていることの一部です。
これによって、どちらに責任があるとは、一切判断することが出来ないことは言うまでもないことです。

0 件のコメント:

にほんブログ村 健康ブログ フィットネスへ