・・・・・・・っということで、A子はフィットネスクラブに入り浸りだ。
朝から晩まで、途中近くのファミリーレストランで昼食を摂る以外、ずっと館内で過ごしている。
以前はエアロビクスやステップに凝っていて、ウェアはILLIGがお気に入りで次から次に買っていた。
四捨五入すれば50歳だが、まだ女としての魅力十分だという自信を持っている。
短いタンクトップに臍だしパンツスタイルでも、若いものには負けていない。
最近はボディー系に興味が移り、立て続けに参加している。
もちろんウェアも高機能トレーニングウェアで上から下まで、バッチリ決めている。
順番待ちで並んでいても、いつも5番以内だ。
こんなにのめり込む自分を客観的に見る目も持っているが、
「だって楽しいんだもの」と心の中で一言つぶやいて納得させてしまう。
何が楽しいって、多くの男性と共通の話題で会話出来る点だ。
若い男性からも、年配の男性からも人気がある。
会社勤めしていた頃から、男性女性問わず付き合いは上手だった。
いまは働かなくても、夫が残してくれた遺産で、なに不自由することのない生活を送っている。
そう、資産家の夫は若くして亡くなったのだ。
家に居ると気が滅入る。
友達と食事やショッピングに行っても、気が晴れない。
こうやって、フィットネスクラブで知り合った利害のない男性達と喋っている方がずっと楽しい。
だからといって再婚する気など全くない。
家に居たくないもう一つの理由は、高校生の娘の存在だ。
拒食症なのだ。
夫が死んでから、娘が自分を避けるようになった。
何度も会話を試みるのだが、心の距離は遠ざかるばかりだ。
母親として、何とかしなければならないとは思うのだが、
ついつい足はフィットネスクラブに向いてしまう。
そうかも知れない。
自分は現実逃避する場所として、フィットネスクラブを利用しているに違いない。
都心の高級住宅街にある一戸建て。
広い芝生の庭と、BMWとビートルの2台が置いてあるガレージ。
開放的な明るいリビング。
システムキッチン。
誰もがうらやむその家に、自分は帰りたくない。
だって、
その家の寝室で夫は自らの命を絶ったのだから・・・。
・・・・・・
以上、100%フィクションです。
(^ε^)♪
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