・・・・・・っということで、男は一人で飲んでいた。
ただ飲むだけではサマにならないので、近くのブックオフで購入した「コ難しい」新書を片手に、
一応「読んでいるフリ」をしていた。
じきに、母娘らしい二人連れが男の隣の席に座った。
男はチラっと二人を視野の片隅に捕らえた。
そして、「デブな親子」であることを即座に確認した。
その母娘が座るなり、男は(チッ!!)っと舌打ちをした。
やたらに母親が娘に向って高圧的な話し方をするのである。
それならまだいいが、娘はそれに対して全く反抗しないことだ。
男は「こりゃオカシぃー」っと思うと同時に、一瞬のうちに隣の二人の現状を把握した。
その把握した現状というのは:
1)これはダンナと離婚して、母親が娘を引き取ったケースだ。
2)母親は、ルーズな性格で、自炊するのが面倒なため、「わた民ん家」で夕食を済ませていること。
3)母親は、相当のアル中であること。
男は、「まず係わりにならないこと」、コレだけを心がけた。
・・・・・・・・・
女は、入ってくるなり、男の存在を認めた。
こんな明るい時間に、サラリーマン風体の男が店の片隅でビールを煽っている。
フツーじゃないナ。
仕方なく隣の席になったが、なるべく係わり合いになるのは避けるべきだと、本能的に感じた。
・・・・・・・・・・
時間が経過した。
・・・・・・・・・
さらに、時間が経過した。
・・・・・・・・・
またしても、時間が経過した。
・・・・・・・・・
隣の(デブの)娘がトイレに立った。
すると、部屋全体が揺れた。
少なくとも、男は揺れたと感じた。
「コリャ拙いぞ。飲みすぎたかな?」
だが、落ち着いて観察すると、部屋自体がミシミシと音を発している。
「コリャ酔いのせいではなく、本当の地震だ。」っと少し安心した。
・・・・・・・・・・
女はめまいがするのを感じた。
「飲みすぎたかしら?」っと思った瞬間、隣のジジイと目が合った。
・・・・・・・っと思いがけず、そのジジイから
「こりゃ地震ですね」
と声が掛かった。
「エッ、やっぱり地震ですよねぇ~」
っと、とっさに作り笑いをして返事を返した。
さらに、ジジイからは、
「私は飲みすぎて、このまま倒れてしまうのかと思いましたよォ~(笑顔)」
・・・・・・っと思いがけない言葉が返ってきた。
「エエ、私もこのまま死んでしまうのかと思いましたよ(笑顔)」
・・・・・・っと、自分でも考えられない返事をしてしまった。
・・・・・・・・
そのうち、娘がトイレから戻ってきた。
母親は言った、「アンタ、いま地震があったでしょッ!!」
それ以来、隣の男との会話は絶たれてしまった。
・・・・・・・・
女は、それ以来男の存在が気になって仕方なくなってしまった。
じっと見つめるワケではないが、良く観察してみると「イイ男」だ。
「チョッと年食っているけど・・・」
難しそうな本を読んでいる。
あれだけビールを飲んでいるにもかかわらず、背筋がしゃきっとしている。
案外、マトモな男かもねェ~。
・・・・・・・・
男は、本を読んでいるフリをしてるが、ビール大瓶4本はさすがにキツイ。
文字は追うけれど、頭に全然入っていかない。
そのうち、隣のデブおばさんがトイレに立った。
先程の会話は、完全に無視することに決めていた。
こちらに気があることは、お見通ォ~しだ。
係わり合いになっちゃイケねぇーぞ。
だが、トイレから帰ってきたおばさんは、行くときよりもキチンとしたお化粧をして帰ってきたような気がした。
ウ~ン、こりゃマズイ。絶対に目を合わすべきではない。
早く、会計を済ませなければ(汗)・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・っと、以上、年寄りのロマンスに発展するか否か、
ひッジョーにビミョーな、且つスリリングな風景を描きましたが、
皆さん、楽しんでいただけましたでしょうか。
end.
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